CDK12に対して高選択性を有するCTX-439は、ファーストインクラスの経口投与可能なCDK12阻害剤です。
RNA合成反応である転写伸長の阻害は異常RNAの蓄積を誘導し、RNA制御ストレスの過負荷をがん細胞に与えることにより、抗がん作用を生み出すと考えています。
CTX-439は、単剤の効果として複数の非臨床担がんマウスモデルで抗腫瘍効果を示しており、加えてその作用機序からPARP阻害剤、或いはDNA複製を標的とする化学療法剤の魅力的なパートナーになる可能性を有しています。
遺伝子発現の最初のステップは転写であり、DNA配列情報がRNAへとコピーされる反応です。
この転写反応は、RNAポリメラーゼ(Pol II)と呼ばれる酵素によって担われています。
転写反応の異常は異常RNAの蓄積を誘導し、RNA制御ストレスを引き起こすと考えられます。
Pol IIのC末端ドメイン(CTD)は、Tyr(1)-Ser(2)-Pro(3)-Thr(4)-Ser(5)-Pro(6)-Ser(7)の7つのアミノ酸配列が52回繰り返しリピートされた特徴的な構造から成ります。
このCTDは多様なキナーゼによってリン酸化を受けることにより、転写の開始、伸長、終結のステップを担っています。
CTDの二番目のSer(2)のリン酸化は、転写の伸長調節と最も密接に関連していることが知られており、我々はこのCTDの二番目のSer(2)に対するリン酸化修飾を担うキナーゼに注目しています。
CDK12は、セリン/スレオニンプロテインキナーゼのサイクリン依存性キナーゼ(CDK)ファミリーに属しています。
CDK12はサイクリンKと複合体を形成し、Pol IIのCTDの二番目のSer(2)をリン酸化することにより、転写反応における伸長ステップを促進し、特にDNA損傷応答に関与するBRCA1、及びBRCA2等の転写産物の伸長を促進することが知られています。
従ってCDK12の阻害は、DNA損傷応答に関わる因子群の発現低下、並びにDNA損傷を導くため、PARP阻害剤や化学療法剤との相乗効果が期待されます。